派生形
派生形
ここまでで学んだ動詞は第1形と呼ばれる最も基本的な形だが、実はアラビア語の動詞にはこれに加えて、第2形から第10形までの派生形と呼ばれる形がある。
それぞれの形によって意味が少しずつ変化していく。それぞれの形ごとの意味的変化には一定の傾向があるため、まずはその形と意味をセットで覚え、その後にそれぞれの動詞にあてはめて意味がどう変化するかを学ぶという流れがおすすめ。ただし、派生形における意味の変化はあくまで傾向的なもので、必ずしもすべての派生形で意味が一致しているわけではないことに注意。
ただし、すべての動詞に第2形から第10形が全てあるわけではない。また、特に古典アラビア語では第11形以降も存在するが、現在はほとんど使われることはないので割愛する。
以下は派生形の完了形と未完了形、意味傾向をまとめた表である。アラビア語動詞の基本として使われる“فعل"(「する」という意味の通常動詞)を元に表記する。また、以下に表記する動詞は全て三人称単数であり、実際にはそれを元に人称・数に合わせて変化させていく必要がある。
完了形 | 未完了形 | 意味傾向 | |
第1形 | فَعَلَ/فَعِلَ/فَعُلَ | يَفْعَلُ/يَفْعِلُ/يَفْعُلُ | 基本の意味 |
第2形 | فَعَّلَ | يُفَعِّلُ | 使役(~させる)・強意 |
第3形 | فَاعَلَ | يُفَاعِلُ | 相手を意識して~し合う |
第4形 | أَفْعَلَ | يُفْعِلُ | 使役・作動 |
第5形 | تَفَعَّلَ | يَتَفَعَّلُ | 第2形の再起・受動 |
第6形 | تَفَاعَلَ | يَتَفَاعَلُ | 第3形の再起・相互性 |
第7形 | اِنْفَعَلَ | يَنْفَعِلُ | 受身 |
第8形 | اِفْتَعَلَ | يَفْتَعِلُ | 自分への再起 |
第9形 | اِفْعَلَّ | يَفْعَلُّ | 色の変化、身体的状態 |
第10形 | اِسْتَفْعَلَ | يَسْتَقْبِلُ | 要求(~を求める)、評価(~と思う) |
以下ではそれぞれ特に意味に注目して解説する。
丸暗記ではなく、ぜひとも意味の移り変わりに面白みを感じながら学ぼう。
・第2形:基本動詞の意味を強めたり、使役の意味を付け加えたりする。
例)دَرَسَ 勉強する→ دَرَّسَ 教える
عَلِمَ 知る→ عَلَّمَ 教える
・第3形:相手を意識して~し合うという意味に変化する。共同・敵対両方の意味になり得る。
例)فَرَقَ 分離する→ فَارَقَ 別れる
كَتَبَ 書く→ كَاتَبَ文通する(書き合う)
・第4形:「使役」あるいは「作動」の意味を持つ。第2形とかなり似ているが、どちらかというと第4形はフスハーで、第2形アーンミーヤで使われる傾向があるようだ。
例)صَدَرَ 出す→أَصْدَرَ 発行する
عَجَبَ 驚く→ أَعْجَبَ 驚かせる・気に入らせる
・第5形:第2形の「再帰」を表す。つまり、第2形「使役・強意」で相手に行ったその行為がそのまま自分自身に再度向けられるイメージだ。
例)غَيَّرَ 変える→تَغّيَّرَ 変化する(自分自身を変える)
عَلَّمَ 教える→ تَعَلَّمَ 勉強する(自分自身に教える)
・第6形:第3形の「再帰」を表し、動作の相互性・連続性・継続性が意識される。
例)نَاقَشَ 話し合う→تَنَاقَشَ 相互に話し合う・議論する
تَبَعَ 従う・後続する→ تَتَابَعَ 連続する
・第7形:主に第1形の受動態を表す。
例)كَشَفَ 発見する→اِكْتَشَفَ 発見される・明るみに出る
قَطَعَ 切る→ اِنْقَطَعَ 切断される、途絶える
・第8形:自分自身への再起。
例)نَقَلَ 移動する→اِنْتَقَلَ 引っ越す(自分自身を移動する)
غَسَلَ 洗う→ اِغْتَسَلَ 体を洗う(自分自身を洗う)
・第9形:「色」を表す形容詞から派生し、「色づき」「身体的・体調的状態」を表す。
例)أَصْفَرُ 黄色い→اِصْفَرَّ 黄色くなる、顔色が悪くなる(アラブでは顔色が黄色いというと調子の悪さを表す表現になる)
أَحْمَرُ 赤い→ اِحْمَرَّ 赤くなる・恥ずかしさ等で顔が赤らむ
・第10形:~を求める、~と評価する、思うという意味に派生する。
例)خَرَجَ 出る→اِسْتَخْرَجَ 発掘する・採掘する(出ることを求める(化石や石油))
قَبُحَ 醜い→ اِسْتَقْبَحَ 醜いと思う