アラビア語の魅力!
学習を続けている皆さんには、それぞれ学習の動機も感じている魅力も様々なことと思います。
今回は私が個人的に感じている「アラビア語の魅力」をご紹介いたします。
1,魅惑の「文字」
アラビア語の魅力と言えば、何と言っても、文字ですよね!
人によっていろいろな表現はありますが、要するに「どこで区切るかすらわからない不思議な文字」ですよね。アラビア語学習入門者の多くがまず躓くのが、この「不思議な文字」を覚える所なんです。
ただ、アラビア文字の魅力(躓きポイント?)はこれだけではありません!重要なのはその文字の書かれる方向です。多くの言語は、横方向に書く場合、左から右に書かれますよね?日本語や英語もそうです。アラビア語は、その反対に書かれます。つまり、右から左に書かれるのです!文字が右から左に書かれる言語は世界広しと言えどとても珍しいことです。
文字の方向が反対だと、日常生活でもいくつか面白いことが起きます。例えばパソコンで文字を打っている時に、文字が左から右に書かれる日本語などと同時にアラビア語を打つと、順番がめちゃくちゃになります。経験がある方にはよくわかると思いますが、独特のストレスを感じることができます(笑)。また、アラブ諸国現地で外国語の映画を観ている時にはそれにアラビア語の字幕がついているのですが、その時に()や句読点が反転していることがたまにあります。私はものすごく突っ込みたくなるのですが、面白いことに、観ているアラブ人は全く気にしていないんですよね(笑)。
2,空耳に聞こえる「発音」
アラビア語の発音を聞いていると、おそらく全くアラビア語を知らない人でも、他の言語に比べて若干真似しやすいことに気づきます。実はアラビア語の発音形式は日本語に少し似ているのです。どういうことかと言うと、例えば英語では子音のみの発音が多いため、基本的にほとんどの子音に母音をセットでつける日本語話者からすると学ぶのにも苦労しますが、アラビア語では多くの文字は日本語のように母音がセットで付きます。つまり、子音の発音さえある程度できれば、日本語のカタカナ発音に近くてもだいたい通じてしまうのです。もちろん、子音だけで発音する場合もありますが、英語などに比べるとその点に関しては圧倒的に日本語に近いと言えます。
上の事実を踏まえると、さらに魅力的な状況が生まれます。空耳の多発です(笑)。下の動画でも話題にしていますが、アラビア語を勉強しているとその空耳の多さに驚きます。たまに日本のお笑い番組で空耳に聞こえる外国語の動画が笑いのネタにされていますが、大体アラビア語です(笑)。これは面白いだけでなく、学習にも大いに役立ちます。私も単語をダジャレで覚えることがたくさんあります(笑)。さらに、アラブ現地で一般的に使われるアーンミーヤ(口語)では発音の簡易化が進んでいて、フスハー(文語)ですら空耳に聞こえやすいアラビア語の魅力に拍車がかかっています(笑)。アラブ現地では、意味は分からないけど、日本語の〇〇にしか聞こえないなと心の中でつぶやいている日本人は多いことでしょう。
上の性質は、名前にも表れています。例えば、「あや」「はな」「さら」という女性名はアラビア語でも多いです。面白いのが、正確に発音すると「アーヤ」「ハナー」「サーラ」になるのですが、どちらも違和感なくアラブ人に通じてしまうのです。やはりそれだけ発音形式が近いのでしょう。逆に言うと彼らにとっても空耳が多いのでしょうか。
3,心が通う「方言」
これも多くのアラビア語学習者が岐路に立たされる問題であり、非常に大きな魅力です。アラビア語はフスハー(文語)とアーンミーヤ(口語)に大別されますが、そのアーンミーヤには、国や地域ごとに異なる方言が含まれます。日本にも方言はありますが、違いはそのスケールの大きさです。アラビア語が実生活で使われている国の数は20を優に超えていますが、それぞれの国に特有の方言があります。そのため、同じアラビア語母語話者同士であっても、国が地理的・文化的に離れれば離れるほど、方言の差も激しくなっていき、場合によってはお互いに全く通じないこともあります。ただし、方言の中にも主にメディアなどでよく使われる有名で浸透している方言もあり(エジプト方言、湾岸方言等)、その話者が話す分には通じることが多いです。また、どうしてもお互いの方言では通じない場合には、フスハーを使うことで解決できます。「アラビア語について」でも話題にしていますが、この2言語変種使い分け状態(言語学ではダイグロシアと呼ばれるそうです。)もアラビア語の深みであり、魅力の一つでしょう。
4,誇りを感じる「外来語の取り入れ方」
アラビア語と長く付き合っていると、アラビア語には、日本語でいういわゆるカタカナ語が少ないことに気づきます。つまり、外来語が入って来た時の日本語とアラビア語の対処の仕方が少し違うのです。日本語では、カタカナを使うことで外来語の言葉をそのまま日本語として取り入れることが多いですが、アラビア語では従来の伝統的なアラビア語の言葉をベースにして取り入れる場合が多いのです。例えば、日本語では旅券は普通「パスポート」としか呼ばれませんよね。アラビア語では、これは「جواز سفرジャワーズ・サファル」と呼ばれ、これは元来「旅行سفر」と「جواز許可」を表す単語の組み合わせです。もちろん、そのままの読み方で「バスボートゥ」(アラビア語ではpの音がないため、bの音で代用されます。)と呼ぶ人もたまにいますが、前者の方が一般的であり圧倒的に使用頻度が高いです。またほかにも、日「エアコン」ア「مكيفムカイイフ(調節機)」、日「ストレス」ア「ضغط نفسيダグト・ナフスィー(精神的圧迫)」、日「リサイクル」ア「إعادة تدوير(再循環)」、日「インフラ」ア「بنية تحتية下部構成」など、数え出したらキリがありません。また、「ビタミン・ジーム!?」でも取り上げたように、これは科学的な記号にまで表れています。もちろん、現在では特にアーンミーヤにおいてはアラビア語でもいわゆるカタカナ語が多く流入してはいますが(日「テレビ)ア「تلفزيونテレフェズユーン」や日「フェイスブック」ア「الفيسアルフェイスあるいはفيسبوكフィースブーク」)、それでもできるだけアラビア語の従来の単語を使おうとする意欲が垣間見えることが少なからずあるのです。これこそは、意識的であれ無意識的であれ、言語を大切に考えるアラブ人の誇りの表れではないでしょうか。
5,将来性のある「立派な国際語」
アラビア語は現在、約24か国、2億数千万人の話者数を誇り、後から追加された唯一の国連公用語でもある立派な国際言語です。湾岸の石油による現代世界への影響力に加え、全体として若者世代の多いアラブには、エジプト等将来の先進アフリカ諸国も含まれており、現在及び将来にわたりアラビア語がより世界の主流言語になっていくことは間違いないでしょう。また、今や地球全体で18億人とも言われる共同体であるイスラム教の言語でもあります。イスラム教徒の数は今この瞬間にも急速に増え続けています。経済的のみならず宗教的、政治的にも今後さらに大きな影響力を持つことが予想されるアラビア語は、まさに可能性に満ちた言語、学びがいのある言語ではないでしょうか。