アラビア語学習に役立つ情報

アラビア語とはどんな言語?

السلام ليكم アッサラームアライクム

アラビア語と聞いて、皆さんはなにを思い浮かべるでしょうか?

私は、アラビア語の勉強を本格的に始める前のイメージは、日本では珍しい外国語、意味不明な文字、砂漠、石油王くらいでした(笑)

まあ、それもあながち間違えでもありませんでしたが、細かい説明をすると、以下のようになります。

アラビア語(اللغة العربيةアッルガトゥ・ルアラビーヤ)は、主に西アジアや北アフリカの中東・アラブ世界で話されている言語です。

話者数 約2億3500万人(世界第5位)
公用語とされる国 24か国2地域(※1)(世界第3位)

上のように改めて整理してみると、その数の多さに驚かされると思います。

元々はアラビア半島の言葉であった言葉が、イスラム教の普及とともに地域を拡大しました。

また国連の公用語6つ(※2)のうちの一つでもあり、まさに現代の立派なグローバル言語の一つであると言えます。

 

ただし、アラビア語と一口に言っても、その実相は多種多様です。

アラビア語は一般的に大きく二つに分けることができます。主に公的な場や書き言葉として使われるフスハーと、口語として使われるアーンミーヤです。

フスハーと呼ばれるものには、クルアーンなどで用いられている古典アラビア語と、それを基盤としたうえで現代世界に対応する語彙を多く加えた正則アラビア語・現代標準アラビア語(Modern Standard Arabic, MSA)の両者が含まれることがありますが、学習者が学ぶアラビア語は一般的には後者のことを指しています。たまに「アラビア語は約1400年前から形が変わらず未だに使われている珍しい言語」と言われるのを耳にするときがありますが、確かに基本的な文字や文法はほぼ変わっていないとは言え、語彙の面ではやはり相当な差があるということには注意が必要です。新聞・雑誌・小説などの出版物はもちろんのこと、ニュースや演説、公的な場での会話にも使用されるアラビア語になります。広大なアラビア語使用地域においても比較的地域差が少なく、国を越えて共有されるアラビア語と言えます

一方、アーンミーヤ(口語)は、さらに国や地域ごとの方言(ラフジャ)に分かれます。一般的な家族や友人同士の会話は基本的にはアーンミーヤで行われます。ただし、それに加えて近年では大衆向けの小説や映画、詩歌にもアーンミーヤが使われることが増えてきています。また、エジプト方言、シリア方言、湾岸方言などはメディアで多用されるためアラブ世界で広く浸透している一方、基本的に遠隔地域同士の住民ではお互いの方言の隔たりが大きく、会話に支障が出ることもあります。

フスハーとアーンミーヤの持ちつ持たれつの絶妙なバランスが現代まで保たれていることから、アラビア語は言語学において現代では珍しい、ダイグロシア(二言語使い分け言語)の典型的な例とされています。

こうしてみると、アラビア語が実際には世界でどれだけメジャーな言語であり、また興味深い言語であるかがお分かりいただけるかと思います。また、アラビア語には個人的に感じているたくさんの魅力と、客観的に納得のいく明るい将来性もあり、ぜひ日本の皆さんにもアラビア語に挑戦してほしいと思っています。

 

※1 アラビア語を公用語とする国

アジア アラブ首長国連邦 – イエメン共和国 -イラク共和国 -オマーン国 -カタール国 -クウェート国 -サウジアラビア王国 -シリア・アラブ共和国 -バーレーン王国 -パレスチナ-ヨルダン・ハシミテ王国 -レバノン共和国

アフリカ アルジェリア民主人民共和国 – エジプト・アラブ共和国 -エリトリア国 -コモロ連合 -西サハラ -ジブチ共和国 -スーダン共和国 -ソマリア -ソマリランド -チャド共和国 -チュニジア共和国 -モーリタニア・イスラム共和国 -モロッコ王国 -リビア国

(公用語はそれぞれの国で日本のように1つだけとは限らず、いくつかの言語が公用語として使われているうちの1つがアラビア語であるという国ももちろんあります。よって、「第一公用語としてアラビア語が使われている国」という括り方をすれば若干数が減るということには要注意です。)

※2 国連の公用語は、英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語の6つ。国連設立後に後から加わったのはアラビア語だけです。

豆知識「アル」で始まる言葉はアラビア語起源のものが多いんですね。なぜなら、alはアラビア語の定冠詞だからです。
(例)アルコール・アルカリ・アルゴリズムなど
ただ、実際にはアルがつくもの以外にも多くのアラビア語起源の単語が存在します。
(例)コーヒーقهوة 、シロップ شَرَاب 、ソーダ、シャーベット、チェス、チェック(小切手)、モンスーンمَوْسِم、ゼロ(零)صِفْر、タリフ(関税率)、タマリンド、コットン、サフラン、シュガー(砂糖)سُكَّر、キャメル(ラクダ)、カラット、ガーゼ 、カンフル(樟脳)、ギプスなど。
このほかにも、科学用語にはアラビア語起源の用語が多いのです。これは、中世から近世にかけてのアラビア語圏が科学分野において非常に発展しており、当時の欧州が積極的にその知識と語彙を取り入れたためです。また、星の名前も多く、夏の大三角形として有名なデネブ・ベガ・アルタイルもすべてアラビア語起源です。中世アラブ世界の繁栄がうかがえますね。